オンア
プル式

オンアが死んだ様に歩いている
両手を下げたまま足を半分ずつをずらして
雨の降る日の埃のにおいの中を
もうじきに秋になる今日の中を
曇り空のロシアの様な風の中で
白いワンピースを着て
だめな顔をしている僕の事を
上目づかいで笑いながら馬鹿にしている

モノクロの映画の様に音声を削りながら
空の星の下でオンアが呼んでいる
僕は人の目を気にしながら知らない顔で
全身を透明にさせる
月の光が体を通り抜ける様に祈りながら
僕にある全てを持てない彼女は
不思議そうに見つめている
風が僕の全てもさらって行くから

手の中でオンアが三回跳ねて透明に変わる夜の中で
おはようっていつ以来なのか声に出して笑って
コウヒイに浮かんだ目玉焼きの油みたいに
月の光は砕けて彼女の中できらきらと綺麗だから
二人で家の近くの波打ち際の波の音と歌って
僕はそんな歌で眠れない
だめだよって言えないままで沈黙が怖いから
オルガンを聴きたくなって

誰か
時計の針を戻してオンアを連れてきて
僕の手の中で笑っているから
月とカクテルになって
波の中で泡に溶けて消えてしまったから
モノクロノ海の中で
ゼリーフィッシュもあったもんじゃない

誰か
オンアに
口づけを
静かな
口づけを。


自由詩 オンア Copyright プル式 2020-09-12 22:44:59
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