うそ
よんじゅう



部屋があたたかいと何も書けなくなった、つま先も踵も地表にはつかず、ふっとうしたひかりになった、七月生まれの人がかに座になって、星座は煮えたぎったあぶくのようだ、部屋があたたかいと何も書けなくなった、いい訳のようにぼくは七月に生まれた、

目を閉じている場所にひかりは世界をつくった、ぼくは、見えているものに指を絡めようとして、ゆびさきはずっとひかりから遠のいていた、ぼくたちは、ひかりは、ぼくは、ひかりたちは、そうやって世界をつくろうとして、毎晩のように目を閉じた、

部屋があたたかいと何も書けなくなった、星座は煮えたぎっている、ゆびさきをひかりに伸ばすと、
七月生まれのぼくたちが足元から焼かれていく、その匂いが、最初の一行になろうとしていた、


自由詩 うそ Copyright よんじゅう 2020-09-11 20:47:21
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