道徳とか倫理とかの上に掛かる橋
こたきひろし
道徳とか倫理とかの上に掛かる橋から足を踏み外してでも
手に入れたいものは有る。
たえず充たされないでいる欲望はきっと誰にでも有る
寂しさに揺れる想い
虚しさに渇くこころの領域
具体的には
そうだ老楽の恋がしたい
いい歳を重ねて何を馬鹿な事を
と
人からたしなめられるに違いない
このまま大人しく ただしく生きて
そして静かに往生するのが人の有るべき道だと
その通りその通りだと
相槌を打つ自分の反対側に
道徳や倫理の教科書なんてくそ喰らえだ
破り捨てたい自分もいる
妻は既に閉経している
それ以前から
夫婦は性を封じている
妻に頑なに拒否されていた
私には妻が理解できない
妻も私を理解できないでいるに違いない
お互いの無理解が長い結婚生活の果てに
横たわる残酷
モヤモヤと不完全燃焼の日々
老楽の恋がしたい
若くて魅力的な女性と
勿論
それはもぎ取れない禁断の果実
私の儚い夢想
夕方の五時になって仕事が終わったら
真っ直ぐ家に帰ります