道徳とか倫理とかの上に掛かる橋
こたきひろし

道徳とか倫理とかの上に掛かる橋から足を踏み外してでも
手に入れたいものは有る。
たえず充たされないでいる欲望はきっと誰にでも有る

寂しさに揺れる想い
虚しさに渇くこころの領域

具体的には
そうだ老楽の恋がしたい

いい歳を重ねて何を馬鹿な事を

人からたしなめられるに違いない

このまま大人しく ただしく生きて
そして静かに往生するのが人の有るべき道だと

その通りその通りだと
相槌を打つ自分の反対側に
道徳や倫理の教科書なんてくそ喰らえだ
破り捨てたい自分もいる

妻は既に閉経している
それ以前から
夫婦は性を封じている

妻に頑なに拒否されていた

私には妻が理解できない
妻も私を理解できないでいるに違いない

お互いの無理解が長い結婚生活の果てに
横たわる残酷

モヤモヤと不完全燃焼の日々

老楽の恋がしたい
若くて魅力的な女性と

勿論
それはもぎ取れない禁断の果実
私の儚い夢想

夕方の五時になって仕事が終わったら
真っ直ぐ家に帰ります


自由詩 道徳とか倫理とかの上に掛かる橋 Copyright こたきひろし 2020-09-06 05:41:10
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