危険な賭け
こたきひろし

思い返せば君をアパートで初めて抱いた夜
それは危険な賭けだったかも解らない

なぜなら
その時私は君の体の中に押し入り
いっとき体を制服したかっただけで
それ以上の感情の昂ぶりには至らなかったからだ

なのに私は何度も欲望に前方を見失いながら
愛してる
アイシテル

うわ言のように口にしたのだ

それはとても便利な魔法の呪文


愛してるアイシテル
を繰り返し囁やけば
全てがゆるされてしまうと言う
誤解と錯覚は
自己に暗示を呼び込んで
いつの日か砂漠に揺れる蜃気楼

愛情とは
奇跡がもたらした
綱の上の倒立歩行か

思い返せば
君を初めて抱いた夜
あの肉体の昂ぶりが愛情へとすり変わる
迄の過程に
迷いに迷い続けた葛藤





自由詩 危険な賭け Copyright こたきひろし 2020-09-04 05:17:13
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