月光
ひだかたけし
無音の夜
また到来し
月はない
月光だけある
白々と
辺り、白々と
浮き上がり
寸断された記憶の
恐怖、また襲い来る
私は私の実感を保てず
意識の外郭だけが生き残り
やがて蠢く闇に呑まれる
(モノというモノ、侵入し
己が内実を埋め尽くし
私は叫ぶ、
外へ外へ外へ!)
無音の夜
また到来し
月はない、月光だけ
洪水となって
溢れ降る
記憶を寸断された男の叫び、
白々と白々と染め上げて
自由詩
月光
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ひだかたけし
2020-09-01 21:38:15
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