吐露とねがい
道草次郎
ぼくは自分のもつ暴力に
気付かないふりをする
ぼくの良心はか細いので
気付かないふりをしても
折れない
折れてしまう人のことは本当はしらない
残酷が
ぼくの初期条件だ
それを罪と呼ぶほどに
ぼくは誠実ではなく
純粋でもなく
人間
ですら
ないのかもしれない
悔悟のよそおいに慣れ切って
もはや何を着たいのかも分からない
ぼくは人に暴力を与える
人は暴力をとおしてぼくの顔を見る
かぶりをふって人は
純粋さを
失うまいとする
しかし
それらすべても
うそで
本当は人は
ぼくの懐に暴力を忍ばせている
ぼくは気付かないふりをして
爆死する
そしてふたたび息を吹き返す
この繰り返しが
くりかえされると
人とぼくはやがて
小さな国を作る
小さな国の住人は二人だけ
二人の肩書きは書記官
いつしか小さな国の興亡が宇宙に刻印されると
小さな国は奈落へと落下する
あるいは
人とぼくはさよらをして___
さよならの先
宇宙の終局点においてふたたび出逢うことを宿命付けられて
薄明で
人とぼくは
興亡史を見やり
懐かしそうに微笑むだろう
人はぼくの傷をそっと撫で
ぼくも人の痣をさする
終局点において時空は停止する
二つの魂魄が
河原をただよいながら
入り乱れ
愉しそうに戯れる
いつまでも
いつまでも無垢はぬぐわれることはない