ドクダミ
道草次郎

白い地味な花
一斉に咲くときれい
強烈な匂いにむせ返る
そのわりに虫がつく
生薬として古来重宝されている、らしい

我が家の庭にあります
というか、よく出入りする物置の入口に群生しています
サンダルで踏みしだくと
もう臭くて臭くて
めまいがします
最近の日照り続きで萎れ加減なのが
唯一の救い

ここ90日ぐらい
世の中ではコロナや経済の停滞のニュースが溢れ返っていたのに
ぼくは毎日自分のことばかり考えて
しまっていて
それでも時々は物置に何かを取りに行ったり
しなければならず
そのたびにこのドクダミの目に染みる臭さを
嗅いでいました

ある時は茹だるような暑さのなか
またある時は雷雨のなか

このドクダミの匂いに紐付けされたような
にがい気持ちを
後生きっと
抱えていくのだなあと思うと
なんだか切なくもあり

ドクダミの匂いを嗅いだことのない人は
きっと想像すらできないでしょう
ドクダミの匂いを知る人なら尚更
想像したくもないはず、です

ドクダミの匂いと善き思い出が一つこころに
共存し得ないという
変てこな仮説を
ぼくは次第に打ち立てるようになりました
もちろんドクダミに罪はありません

そんな日々でありました
そんな夏でありました


自由詩 ドクダミ Copyright 道草次郎 2020-08-24 08:35:44
notebook Home