春休みの宿題訴訟
星 ゆり
ちなんで、もしも、である前に
観察するだけのキャットファイトを
虫の温かみで、あざ笑ってみせよう
高熱のオクターブで赤ペンを溶かして
番犬をレンチン、はっかの匂いがするのだ
葉脈のふちにぶらさがる下着を
朝が焼けるまで、名づけないで
ナイトマーケットの灯りで先生、ばれるなら
ひめゆりの塔で
一緒に最後のミスタードーナツ食べようよ
病交じりの調停人、うなじが檸檬の形して
本当はみんな家に帰る気持ちでいっぱい
優しくて殺したいから、そこが心っぽくなるの
百円玉くらいの重みでまどろむから
カエルの皮膚にも保湿してあげたい
たてがみのすきま風に、火の手が増したら
理科室去って、魂を紙袋に入れる
発育不良の痛みはジャムにして
ねぇせんせい、ぜんぶたべて
校庭花壇の上空一千メートルで設問して
春の成層圏で手をつなぐ夢を見る
結び目に絡まる息で、液晶のような葉脈
ショートピースをくゆらせて
うんざりするほど十七歳にしてほしかった
手前どものかすみ草は十億年前に埋めたから
今更、春休みに水をあげてられない
だから負けたよ、安らぎはへばりついた
死ぬ前の愛だけが
外れたブラジャーにせり上がったまんま