星の刻
道草次郎

星の刻
ぼくは砂漠のトカゲで
歩き疲れたラクダは銀河を見ていた
水溜まりにはジュラ紀の鬱蒼が
ネアンデルタール人の女の子とも恋をして


弄ぶ時流のうねり
倦むことなき鍾乳石たち____



単細胞生物だった思い出は
キリマンジャロの彼方へ疾うに消え失せた
白亜紀の火粉が暁新世の扉に降りかかると
さすらい人の太陽が2億年ぶりの帰還を果たす


漂着した羊皮紙を齧り齧り
化石化したスマートフォンに竹節虫ななふし
のような指を這わせる____



星の刻
ぼくはふたたび古代魚となって
始原の海へ泳ぎだす
ほやほやの脊椎が痒くてたまならない


自由詩 星の刻 Copyright 道草次郎 2020-08-19 10:33:53
notebook Home