星の刻
道草次郎
星の刻
ぼくは砂漠のトカゲで
歩き疲れたラクダは銀河を見ていた
水溜まりにはジュラ紀の鬱蒼が
ネアンデルタール人の女の子とも恋をして
弄ぶ時流のうねり
倦むことなき鍾乳石たち____
単細胞生物だった思い出は
キリマンジャロの彼方へ疾うに消え失せた
白亜紀の火粉が暁新世の扉に降りかかると
さすらい人の太陽が2億年ぶりの帰還を果たす
漂着した羊皮紙を齧り齧り
化石化したスマートフォンに竹節虫のような指を這わせる____
星の刻
ぼくはふたたび古代魚となって
始原の海へ泳ぎだす
ほやほやの脊椎が痒くてたまならない