心が鈍く疼いてどうしようもない時は
道草次郎

心が鈍く疼いてどうしようもない時は
コオロギが鳴いている叢に身を投げ出して湿っぽいその草の青臭さにまみれていたい

夜露や植物が生み出す甘い匂いなんかが必要なのだ
五月雨よりも胸を打つ語句なんていらない
張り裂けそうな胸の痛み
そんな率直な表現があればそれでいい

びしょびしょになるまで雨に濡れ続けていたい
みるみるうちに体温は下がるだろうが
容易に死に至らしめられる生存のことを忘れずにいたい
体を暖めることが恩寵となりうる自然の恵みを思い出したい

流れ着いた筏はこれを打ち壊し薪としてしまおう
メラメラと燃える薪に目を据えて鎮まっていく何かをいつまでも愛していたい
やがて到来する独りぼっちの夜明けをどこまでもうやうやしく期待していたい


自由詩 心が鈍く疼いてどうしようもない時は Copyright 道草次郎 2020-08-15 17:29:57
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