運命と運命じゃない展開
こたきひろし

暑い
猛烈に暑い

直射日光が路面に照り返し
俺の体は火柱のようになっていた
とても仕事出来る環境になかった

俺は何だか
そこが原爆の落ちた後のヒロシマの街のような
気がした

そんな事を思うのは
そんな妄想に浸るなんて

ふざけている

生存者や御霊の皆さんの怒りをかってしまいそうだ

いきなり
舗装された足下の近くに
蝉が一匹
まるで
叩きつけられる様に落ちてきた
自らの全身を叩きつけるように
落ちてきたのかもわからない

その姿は尋常ではない
哭き狂うように
苦しみもがいている

その時
俺が刹那に思ってしまったのは
蝉に生まれなくて
よかった
だった

そしてそれは
原爆の落ちたヒロシマに生まれなくて
よかったに繋がった

八月
盛夏

その日
その時の自分


自由詩 運命と運命じゃない展開 Copyright こたきひろし 2020-08-15 08:04:12
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