縮図
こたきひろし

一人を思い続けて愛情を注ぐなんて
不可能
阿呆にはなれないんだから

でも
出逢い
幾つかの段階をへて
運命共同体になった
ならざる得なかった

男と女はお互いを見えない鎖で
縛りあいながら
無意識でいられる関係
時には背中を向けあって
冷たくもなれる

それでいいんだ
それだからいい

その夜
彼女は途中で もうやめよう と言った
どうしたの?
彼が聞くと 彼女は答えた 疲れるの
そして言った
「もうあんたとは一生したくない 飽きたから それを言えなくていつか言いたくてずっと我慢してきたの だから私の体にはもう触らないでね 触らせないから」

一人を思い続けて愛情を注ぐなんてできない
そんな阿呆なんていないから

彼女はその夜に容赦なく一言で証明してくれた
彼は彼女のあまりの言いように
何も言葉が見つからず
黙ってしまった


自由詩 縮図 Copyright こたきひろし 2020-08-12 02:56:12
notebook Home 戻る