白い八月
星 ゆり



  海の背中に鳥が落ち
  八月半ばが焼け進む
  青みと光と電線町よ
  白光の出口のようで
  ただの真昼の三丁目
  蝉が鳴き止まないと
  見知らぬ死の名前を
  あなた知ってますか
  蝉が鳴き止まないと
  呟く言葉の片手から
  仲直りを知らないと
  半袖からかみさまが
  出口と回答の誤差を
  つくつく見つめてる


  白骨が焼けるような
  熱さを振り返ります
  それは願っていても
  冬と対等の熱さです
  星々が決めたことに
  私の十本のゆびさえ
  手折ってやれない魂
  爪をはじく赤い日輪


  焼いてくれたのは蝉
  鳴いてくれたのは海


  言い交わしのない夏
  言い交わす事もなく
  焼け残ったのがあの
  骨のない私ですから
  海の背中に鳥が落ち
  八月半ばが網戸から
  凍りついた私を抱え
  鳴き止み越してくる


  まっしろなのが出口
  まっしろなのが回答


  口を開いてください





自由詩 白い八月 Copyright 星 ゆり 2020-08-07 16:31:47
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