八月の紫陽花
そらの珊瑚

何かおかしいと思うことのひとつは
庭の紫陽花のことだった
八月を迎えても その子たちは
いまだつぼみのままである
長すぎた梅雨のせいで
ウエハースはたちまち湿気り
紫陽花は許容力をはるかに越えた水分を
細胞に蓄え過ぎてしまったからかもしれない 
さらには花を咲かせぬ新種の花か などと
考えてみる

或いはそこだけ時を止める魔法を浴びたとか

今さら
魔法使いにも植物学者にもなれないし
何者にもならずとも
みな等しく死んで行く

時おり
造花であったかとあやぶみ
指先で触れて確かめてみる
硬い命のありかのありなしを


自由詩 八月の紫陽花 Copyright そらの珊瑚 2020-08-07 10:20:14
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