八月の紫陽花
そらの珊瑚
何かおかしいと思うことのひとつは
庭の紫陽花のことだった
八月を迎えても その子たちは
いまだつぼみのままである
長すぎた梅雨のせいで
ウエハースはたちまち湿気り
紫陽花は許容力をはるかに越えた水分を
細胞に蓄え過ぎてしまったからかもしれない
さらには花を咲かせぬ新種の花か などと
考えてみる
或いはそこだけ時を止める魔法を浴びたとか
今さら
魔法使いにも植物学者にもなれないし
何者にもならずとも
みな等しく死んで行く
時おり
造花であったかとあやぶみ
指先で触れて確かめてみる
硬い命のありかのありなしを