夏の練習曲
塔野夏子
清い流れに沿い
鶺鴒が閃くように飛んで
揺れるねむの花
ねむの花はやさしい花 と
誰かが云った
小さな手が生み出す
鍵盤の響きはたどたどしくても
その無邪気さで
天使の声を紡ぐ
小さな嘆きにも
予期せぬさようならにも
いつかは
なぐさめが優美に降りたって
夏が来ると
ことさらになつかしい帰り道
たどたどしい練習曲が
聴こえる
ピアノの初心者によく使われる「ブルグミュラー25の練習曲」からいくつかの曲タイトルを詩の中に入れています。現在出ている楽譜では、タイトルの訳語が変わっているものもあるようですが、私が習った当時のものをここでは使いました
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夏について