ジム・プリマス

蛾って
匂いを感じるための
大きな二対の
触角があるだけで
口がない
成虫になると
食べ物を食べることはなく
幼虫の間に食べた
栄養だけで生きてゆく
そして
雌のフェロモンを求めて
雄は何百キロも旅をする
自分たちの子孫を残すためだけに
交尾の機会だけを求めて
その羽根の奇怪な模様で
人間には嫌われるようだが
なんて慎ましくて
物静かな
害のない
生き物なのだろう
漫画界の妖怪的巨匠
「水木しげる先生」の漫画で
邪悪な妖怪を
害のない巨大な蛾に変身させて
退治するという話を
この詩を書いている間に
思い出した
「コロナ過」という
現世の妖怪も
このようにして退治
出来ないだろうか
僕の意識の象徴として
現れる金色の木蠹蛾も
そんな蛾の慎ましい一生を
反映したものかも知れない
今宵はせめて
世界に存在する蛾たちの
慎ましい繁栄を願おう



自由詩Copyright ジム・プリマス 2020-08-05 08:01:38
notebook Home