星 ゆり



ほんとうは、たたかうほうが好きです
若いことを踏み潰した、地続きの傷
なぞると忘れた横顔に似たきり、
痛みにしがみつくことなく
目を閉じます


白い配りもの、光って、子に散る声
だれもいない孤独
そのかくしきれない時間を
口にもせず、ひとつひとつ拾いなおす


沈黙が聞こえてしまうと、
死をたくされた顔もあちらこちらと
別の自由を呼び返す
別の束縛を呼び返す


ちょうど一口大の風を飲み込んだ
まったくの暗みに指はまわる
かえってこないものもさらうような
血の流れが、わたしをつかめず
思わず人をたたいてしまいます


呼んだらいけない季節の肉片も
たたかったあとのわたしの海
泳いでたどりつく、朝や花、夜や雨
全て立ちつくしたあとで
声をかけてほしい


名前をもたらすには足りない影が
わすれさられたものたちの
自由と束縛の正面を見始める


人は見始める





自由詩Copyright 星 ゆり 2020-08-04 14:14:35
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