目の前の現実に視線を合わせる
ジム・プリマス
今日も
意識を想像の海に遊ばせて
精神の懐かしい場所に
ゆっくりと降下してゆく
そこに見えるのは
青色の巨大なアステカ蟻の行進
それは僕の意識の辺境まで
延々と続いてゆく
空には金色の木蠹蛾の群れ
それは僕の意識の頂点から
ひらひらと降りてくる
時間はとどまることなく
流れ続けてゆく
ふと気づくと
窓の外の風景は
夕闇から宵に
移り変わっていた
我に返って
辺りを見回せば
煤けた部屋の中でひとり
宵闇の中にとり残されている
そこではパソコンの
モニターの光だけが
白く浮きあがっている
突然
イザベラに
日本へ来ないかと
メールしたことを
僕は思い出す
やんわりとした断りの返信が
返ってくることを予感して
僕は目の前の現実に
視線を合わせる
そうすると
普段は意識の外にある
脳裏の中の雑多な絶望が
首をもたげてくる
それは
明日からの生活に必要な金だとか
まだ支払いをしてない自動車税とか
これからかかる固定資産税とか
昨日の食べ残しのチキン・ソテーとか
だったりする
げんなりしながら
新しいタバコに火をつける
アルカロイドが
身体に浸透する感覚に
意識を合わせながら
また詩の中の夢想に
落ちてゆく
この感慨はまた
一つのつたない
詩に変わるだろう