重い紙袋
七
つま先にあたった石ころが
ころころ
ゆるく転がって川に落ちる
何の音もしない
七年前
職場のわたしの歓迎会は
小ぎれいな洋風レストランに皆集まった
こげ茶のテーブルの
中央席に野暮ったく座ったわたしに
三ヶ月で慣れますよ
困ったらいつでも言ってください
のちに癌で亡くなる
部長はワインを注いでくれた
古くて優しい眼鏡が反射するので
顔を思い出せない
皆にやさしいのですねと言いそうになり
ワインをグラスいっぱい注ぎ足されて
わたしは黙り込む
川原には夏の熟れすぎた
息が漂っている
重い紙袋を大事に抱え
躓きながら歩いてゆくと
遠まきに
カラスたちが窺っている
袋からなにを取り出すのか
すごく知りたいのだろう
わたしも知りたい