かみなり
帆場蔵人
遠雷が鳴る あとかさき
かなかなひぐらし かなしんで
夏の報せ、がたくさん奪っていった
なつのせみはるのせみ黙っていった
遠野で踊るハタタ神、てをのばして
あの遠雷に帽子を被せたい
鉄塔を僕はひたりと登って
きた道が雨の気配に湿って
やがて、雨中に沈むだろう
鉄塔の蜘蛛や糸にすがる、亡者と話し
帽子を片手に持ちながら、鉄塔ゆれて
きた道ゆく道雨に沈んで、鬼灯あかく
遠雷をともして、鬼灯ともり、くちなわたれて
つかめどもつかめども、遠雷はつかめないのだ
かなかなひぐらしかなしんで声をなくしていく
遠い野に落ちる、遠雷、それは運命のようだ
遠い野にみちる蝉の声、ただ遠いだけなのだ
遠い野はただ遠い、ただそれだけなのに遠い
ひたりひたり遠い野にてをのばして
ひとり僕は帽子を鉄塔に被せた