私に見えるものだけが真に見えるもの
道草次郎

誰かとあって
そのひとも
いつかは死んでしまって
ぼくもしんでしまって
でもぼくがしんだら
もう誰も死ねないね

だからごめん
花の首飾りがしたい

空はぽかんとあいた人間で
世界はただの貝塚で
ネアンデルタール人が
発明したんだよ
埋葬って

ほんとはないんだってね
世界
知ってた
知ってたよ
けど
生きなきゃならなかった

もうあのひとも
探さないでって言いのこし
連絡をたった

思い切り
ぼくは誰かをあいしてしまおうかな
つまらない
復讐かなんかのために

でもやっぱり
そのひともぼくも死んじゃうんだ
ぼくがはやくしんだら
そのひとは
きっとなくなってしまう
そして
そのひとが先に死んでも
ぼくは
なくなってしまう

だから
どうか
花の首飾りをください
どうか
花の首飾りという
ほんもののピストルをください

儀式だけが
やさしげです

原子となってしまうのです
意味とてなく
太古に生きてしまいたい
蘇鉄となって

フィクションに一番近くて遼い場所
骨に吹く風は誠実

十字架と
花の首飾りをください





自由詩 私に見えるものだけが真に見えるもの Copyright 道草次郎 2020-07-28 17:36:22
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