すなはま
「ま」の字



ここにひと欠片かけらの記憶が落ちていた
天候にもよるが
ふいにキラキラとうつくしく光りだすから
この一片には
よほどの幸せとそれに彩られた日々があるにちがいない
と思われた
けれど
欠片だけがここに落ちていたからには
この記憶の所持者はもはや生きてはいまい
それもあまり良いかたちでなく、命をおとした
としか考えられない
すなはまは遠い先までさむざむとして
いいや砂がとてもとてもくろいのは 
つねにつめたい波に濡らされているからだ
ここは世界のあとにくる世界であって あるようで
(ほんとうはただのすなはま であっても かならず
人生は誰にもみえず
すさんだ風が
自分の頬をも吹くのだ

ここにひと欠片の
記憶が落ちている ひきちぎれた
肉体の一部が
わたしも
いつか そうである




あるく





自由詩 すなはま Copyright 「ま」の字 2020-07-26 20:25:30
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