ライオン
もちはる

ここはサファリ―パーク
鉄格子のバスがゆっくり走る

ライオンたちが
しなやかな動きで
毛並みを揺るがせながら
あちらからもこちらからも現れる 

猛々しい唸り声

嘗ては
サバンナを駆け抜けた乱暴者
今は
名前をもらい
食事も与えられる寄宿生
命を賭けて
獲物を奪い合い 住処を探し回る
闘いの日々はない

檻の中で弛む顔
飼育係りのごきげんばかり覗き
自由になりたいのに
逆らおうともせず
逃げ出そうともしない
人間にも似た
堪忍した顔

寄り添い合い
木の上からどこを見ているのか
鋭いはずの眼差しは
遠く 寒い
たてがみに夕日がしずむ


自由詩 ライオン Copyright もちはる 2020-07-23 16:23:49
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