新盆
ゆるこ
短い髪の毛を揺らして歩くセーラー服
単調な音を鳴らすしまむらのスニーカー
畦道の傍らの、コンクリートに転がった
蚯蚓の焼き尽くされた死体が
まだら模様に広がる夏
自転車の回転音に 時折
吃音のように挟まれる不協和音と
興奮した呼吸音が混ざりあい
揺れる帰路を穏やかなものにしてゆく
青い
ただひたすらに青い夕暮れ
水分を孕んだ空気が空から降りて
空っぽの胸を苦しくさせる
ビー玉みたいな瞳 鼻をつく野焼きの香り
一面の、広い広い茶畑と
茶摘みをしている同級生のお婆さん達は
手拭いを掴み 空気に溶かしていく
簡単な風車が風もなく回っている
やがて 群青色の夜が来る前に帰ろう、
蛙のチューニングが始まる中
白いうさぎが飛び跳ねながら 茶畑走る中を
かけてゆく
・
段々になった畑の傍らに
ひっそりとお骨が埋まっている
墓石のないそこには
最後まで憐まれられた
ぼろぼろの母の遺骨が埋まっている
可哀想な母の
ながいエンドロールで嗅いでいた
いつでも思い出せる死臭すら
愛しく思えるほど
今
私の魂はそこに行きたい
行きたくて 行きたくて 堪らない
蒸し暑い、蚯蚓の姿は見えない道で
そっと 誰にも聞こえないようにこぼす
たちまち喧騒がかき消してゆく
青いイルミネーションは
医療従事者への敬意で輝いている
誰も迎えられない今年
悲しく 流れてゆく