新盆
ゆるこ



短い髪の毛を揺らして歩くセーラー服
単調な音を鳴らすしまむらのスニーカー

畦道の傍らの、コンクリートに転がった
蚯蚓の焼き尽くされた死体が
まだら模様に広がる夏

自転車の回転音に 時折
吃音のように挟まれる不協和音と

興奮した呼吸音が混ざりあい
揺れる帰路を穏やかなものにしてゆく



青い

ただひたすらに青い夕暮れ




水分を孕んだ空気が空から降りて
空っぽの胸を苦しくさせる
ビー玉みたいな瞳 鼻をつく野焼きの香り

一面の、広い広い茶畑と
茶摘みをしている同級生のお婆さん達は
手拭いを掴み 空気に溶かしていく
簡単な風車が風もなく回っている


やがて 群青色の夜が来る前に帰ろう、

蛙のチューニングが始まる中
白いうさぎが飛び跳ねながら 茶畑走る中を
かけてゆく





段々になった畑の傍らに 
ひっそりとお骨が埋まっている

墓石のないそこには
最後まで憐まれられた 
ぼろぼろの母の遺骨が埋まっている

可哀想な母の 
ながいエンドロールで嗅いでいた
いつでも思い出せる死臭すら 
愛しく思えるほど 


私の魂はそこに行きたい

行きたくて 行きたくて 堪らない


蒸し暑い、蚯蚓の姿は見えない道で
そっと 誰にも聞こえないようにこぼす
たちまち喧騒がかき消してゆく
青いイルミネーションは
医療従事者への敬意で輝いている


誰も迎えられない今年
悲しく 流れてゆく


自由詩 新盆 Copyright ゆるこ 2020-07-20 12:33:40
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