あの日あの夜あの時の感傷
こたきひろし

真実の仕合わせと
偽物の仕合わせを
きちんと見分ける眼なんて
持ってなかった

ひとときの感情に振り回されて
見失った大切なもの

振り返れば
ずっとずっとずっと
続いている自分の足跡には
悔やむ思いが刻まれていた

愛する人と
愛してくれた人
この眼を閉じれば瞼の裏に思い描ける人

その数はほんの僅かでも
いつかは届かぬ所へ離れていく運命

少年の日
この胸を焦がした夢は
流された歳月に儚くきえた

今は目の前に有るものが全て
老いて干からびた手は
握り締めてもこぼれて落ちるものばかり

こぼれて落ちるものばかりだ

何も拾えない
何一つ探しあてられない

寂しさばかりを
汲み上げてしまうだけ





自由詩 あの日あの夜あの時の感傷 Copyright こたきひろし 2020-07-18 04:39:28
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