文芸アラート
アラガイs


共同という文字が言葉で解釈されれば如何に脆いものなのか。この汚物に溢れた便所や流し台の散乱ぶりを見れば大凡見当はつくのであろう。ひとたび配水管の流れが止まればもうこの有様なのである。   by 多児真晴


通信社の受付に置かれてある鉛筆が無くなって困る、と彼女はぼやいている。
台の上にはその日の訪問者用にボールペンと鉛筆が置いてあるのだが、何故か訪問客は鉛筆で名前を記入しそのまま持ち去るそうだ。
‥‥鉛筆ならばもらってもいいだろう‥そんな風に考えてるのかしらね。
彼女は怪訝な表情をして、それでも少し刹那気な上目遣いでわたしを見つめるのである。
‥使う度に拭き取ってるんだろう? 指紋を‥‥笑。 手間を省かせてやろう、とか思っていたり‥まあ、そこまで気づかいしてくれる人間も少ないかな‥‥
少しは慰めになるつもりで言い返したのだが、これは冗談も含めて、いや、案外正解かも知れないのだ。傍にはティッシュペーパーが置いてあり、綺麗なセンスのいい絵柄の箱にはボールペンと鉛筆とにキチンと分けて並べられてある。その細やかな配置から彼女の仕事に対する姿勢を汲み取った故の行為かも知れないな。
などと上司でもあるわたしの口からそこまでは言えない。
しかし、最近は塵が増えて忙しくて忙しくて、と掃除のおばちゃんは汗を拭きながらぼやいていた。
社内の感染症対策には一体誰が命じられるのだろうか。 ‥‥ここまで本気になれば心配だ。もしも‥の自信がない。
‥如何にも見えにくそうに眼を近づけては離し、緩め縮め伸ばす‥ノートを開きながら早足で歩く‥リズム‥
キーボードよりもボールペンを手にして‥‥仕事の振りをしなければならない。不格好なリスクで‥
‥‥やれやれ、同じボヤキでもずいぶん差があるものだ。







自由詩 文芸アラート Copyright アラガイs 2020-07-18 01:12:08
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