エゴイズムを超えるために書かねばならなかった詩
道草次郎

ここに記すことは
僅かばかりの蓄財の子への法的な譲渡に関するいくつかのことがら
そしてその他言い尽くせぬ様々の経緯、背景、心境を集約し遺そうとする意思
その意思はギリギリまでに削ぎ落とされ、真実のみが示されなければならない
ここにはお前が長じて後知るべき多くのものが記されるだろう
端的に表された数行の散文のうちにそれが見出されるよう全力を注ぐつもりだ
ここには、かなしみとか怒りとか蔑みとかそういう荒削で獰猛な感情は示されるべきではない
お前はお前自身の心の声に従いこれを読むだろう
数行の一文字ひともじのうちに立体的につらなった、あらゆる背後や、透明な過去や未来へと結ばれた糸をお前は見出すかもしれない
しかしそういうものは見出されないかもしれない
ただお前はその通り単純に読むかもしれない

ここに記すことは
言わば不幸の良い見本で、注意深く退けられて然るべきものかもしれない
その可能性のほうが高いのであるが

お前はお前を培ってきたすべてを以てここに記された事を否定したらいいお前がそう望むならそれは素晴らしいことだ

お前が見出そうが、否定しようが世界の美しさには変わりはない

世界は美しい
もう一度言うよ

世界は美しい

お前は、絶対にわたしを許さなくていい
お前は、お前の自由にわたしを断じ、取引し、和解すらして構わないのだ



自由詩 エゴイズムを超えるために書かねばならなかった詩 Copyright 道草次郎 2020-07-17 20:24:06
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