夜の底で
道草次郎

「わたしたち、どうしてこんな話してるんだろうね」


そう言って君は口を噤んだ
僕も何も言わなかった
言えなかった

沈黙がしばらく続いた

久しぶりに一緒に吸った沈黙
それに縋れるほど
もう僕ら
単純じゃないのは知ってる

夜の底で
降りしきる雨だけが
やさしげなのは
やっぱり良くないことなのかな?

僕らには
手に負えないだけ
いろんなことが
手に負えないというだけ

変わり映えしないドラマの
1シーンのように
雨が降っているところなんか
じつに馬鹿げてるよ

単純だよ
やっぱり
一つだって複雑なところなんか
見当たりゃしない

見切りをつけて振り返らないこと
必要なのはそれだけだって知ってるのにね







自由詩 夜の底で Copyright 道草次郎 2020-07-16 11:03:20
notebook Home 戻る