アダージョ
メープルコート

 
 緑色の衣を羽織り人が死んでいる。
 うっすらと開かれた瞳に映る永遠。
 絶望や幸福を超越する組まれた手。
 愛に包まれた人生。

 音もなく忍び寄る悲しみは
 目の前に広がる大海を滑る波のよう。
 たとえ短い命でも
 その魂は熱く滾っている。

 人の魂は興味を持って旋回し
 やがて打ち込み発汗する。
 命の源はその心だ。

 倒れてゆくその瞬間に
 優しさに包まれた緑の着衣は
 赤く燃え上がり、歓喜の涙を流す。

 


自由詩 アダージョ Copyright メープルコート 2020-07-13 04:01:01
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