静寂
ミナト 螢

誰かに取り残されたみたいな
町に住んでいる
夏が透けると思うのは
隣人の会話が
窓の枠を伝って来るから
生活の音に混ざる方便が
静寂という石灰を溶かして
水が流れるのを聞いている
背景に電車が揺れても
切り取ったような台詞が
肉じゃがを崩したり
家族の温もりを願う
僕の想像は夕方頃にピークを迎える
ひとりは平和で快適だけど
次に待つ人がいないせいで
一番風呂が嫌いになった
夏はシャワーで済む分だけ
僕は心臓に十字を切る


自由詩 静寂 Copyright ミナト 螢 2020-07-12 19:14:00
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