卑猥な落書き
こたきひろし
絵心なんて欠片も感じられない
相応に絵の素質なんて持ってないだろう
公衆便所の個室の壁に書かれていた
下手くそな絵の落書きは
下品で卑猥だった
作者は用をたす前に書いたのか
用をしながら書いたのか
用が終わってから書いたのか
想像するだけで可笑しくなった
作者はきっと性的欲求に充たされていない人物だろう
とか
或いはその反対なのかも知れない
とか
想像するだけで楽しくなった
どっちにしても幸福から見放された人なんだろうな
とそれを「正解」として括りながら
私は用をたすと卑猥な落書きの横に
詩を一編書いて残した
即興で
美しい言葉を紡いだ
それはそれは
卑猥な落書きに皮肉を込めて
私もまた
幸福からは見放されていた
哀れな羊だから
羊がゆえに