魔女とリコリス
カマキリ
屋根を強く叩く雨音を
頬杖で迎えた午後
足元に灰はどんどん落ちていって
いつの間にか火の消えた煙草を根本だけ一度吸う
積み上がる吸い殻の横に
読めなかった本が重なって
湧き上がる湿気が
わたしをもっと鈍くさせていく
何度、窓の外を確認しても
歪んだアスファルトに水溜りがあって
急ぐ車がしぶきをあげて通り過ぎる
わたしはまた
どこへも戻れない気がして
灰皿からしなびたフィルターをちぎる
魔女とか裁判とかその行方とか
そんな類の本を表紙だけ眺めながらリコリスの紙に葉を詰める
少し甘かったけど
水溜りは消えてくれそうになかった