夜の襞
塔野夏子
部屋の片隅に
壊れてしまった時がいくつか
転がっている
それらは この夜に
透明な襞を寄せてゆく
やがて その襞は
包んでゆく
君の記憶を あるいは予感を
あるいは 記憶と予感とが
交接して生まれる何かを
それは透明な襞に包まれて
やわらかく息づいている
その息づかいを感じるほどに
この胸は薔薇へと変わってゆく
夜が果てるまで咲きつづけてゆく
幾輪もの薔薇になる
自由詩
夜の襞
Copyright
塔野夏子
2020-07-05 11:24:47