感受性倦怠期の客船
あらい

皺腹の慈母。青嵐の借款、停滞した賢人の叡智
犇めき合う脳髄に垂れ下がる、降水確率の余波
何もかも嘘ばかりのあなたの笑顔に恋したう

明日、フラれる絆で染みた水玉模様の
手拭いを深深と縦に引き裂いて二枚にする
出来合いの惣菜みたいな
誰でもおいしい思い出と希望を、安上がりな知識で置く
百均のタオルとハサミで未来をも丸呑みにする
蛟になりたかった。

(或る高みにある餌の取り方)
つる下げたバナナに土台を置いて猿のように忠実に準える
進化の過程にて
キリンの髭だけを門扉に結び付ける、
本当は出来損ないのシニガミですら
湿った折り紙で綺麗に作り込まれた
立体交尾の絵本でなきゃ生き続けられない、
隅に侵され売れ残りの水蜜桃はもはや腐っていて
そんな誰の記憶にも残らない人生で結ばれたい
綺麗なおべべで飾り立てる、十二戒の雛飾りの上段に、
嘘でもいいから
私とあなたを薬包に仕立て、らくにあげたいのです。

格子に治まる長月。
落書きされたガラクタの子供達に告げ口する、
青い鳥の骸が解けて流れた先に
夏の名残のまま種を残した花火が身も心も残腹に破裂した。
二重露光の虹彩とモノクロの吐瀉を焼き増しする、
未来を育むことのなかった愛しいものたちの、花暦のかたち。
埋め尽くす涙と五月雨から飛来する灰のような雪に
トチ狂った無限大の軌跡を抱いていた、あれは赤子の、渡し。

感受性倦怠期の客船に乗り込んで、今にも沈みそうな。


自由詩 感受性倦怠期の客船 Copyright あらい 2020-07-01 23:32:21
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