梅雨も明ければ
AB(なかほど)



湿る金属 の臭いと 舌の先

金属は湿っている
唇は乾いている

それは六月二十三日
信号は点滅している




主の無い 蛍袋と 荒屋敷

壺屋の水は甘かったか
久茂地の水も甘かったのか
今は
酒屋の水も
なんだかとても酸っぱい
じんじん
今も
その花に隠れているのか
そこからも
誰かの光は見えているのか
じんじん
あの娘の涙を飲んで
落ちて来るか
じんじん




足元に 群れる射干の 語る人

少し湿ったね と
旧道沿いの
あしもとのほうから
梅雨のにおい と
祖父のにおいがした

ふりかえると
あたり一面にシャガの花

思い出すひとがいるから
咲くのだろう


もう一度ふりかえると
祖父の家

明日から空家となる





声も無く 人の面を 斫る月

君が百本の小説を乗り越え眠るころ
僕は一握の詩の前で童貞のままで
国際色の喧騒にしがみつきながらも
同じ月の夢に 

ニャー
   と哭く



  


自由詩 梅雨も明ければ Copyright AB(なかほど) 2020-06-30 08:57:28
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