いつもの朝に
小林ケン
最寄り駅へと向かう人波の中
今朝も私を追い越してゆく
その自転車の後部席に
ちょこんと座っているのは
いつもの男の子
漕ぎ手のお母さんが
左右のペダルを踏むたびに
ちいさな男の子の
頭も左右に揺れている
そうして揺られながら
男の子は
どこかを一心に見つめている
そのつぶらな黒い瞳に
なにを映しているの
昨日と同じ街の景色
いつもと変わらない勤め人の群れ
繰り返される暮らしの中で
人波をかき分け
懸命に自転車を漕ぐ
お母さんのうしろ姿
不意に男の子が振り返る
予期せぬことに目と目が合って
戸惑う私に
男の子は
天使のような笑顔をくれた