ロケット
カンチェルスキス






 ガソリンスタンドの光が
 日曜日の朝の教会みたいに見えた
 おれは神様なんか信じてないけど


 仏頂面して
 お気に入りの歌もなくて
 交差点をすり抜ける
 自転車の女のスカートの足を
 盗み見て歩く


 道が途切れるまで行くことと
 誰かを殺してしまうことが
 同意義だったけど
 どちらもできなかった
 おれは雲に隠れた星なんか見上げない

 
 地球の裏側にのぼった太陽を
 恋人たちが喜んでる
 今日の約束は実行される
 その先に
 生命の誕生があったりする日
 

 歩くたびに
 人の気配がなくなっていく
 車の音も消え
 電灯の数も減ってきた
 香り鼻腔にたどりつく花の名前も
 思い出せない


 ガソリンスタンドの光が
 日曜日の朝の教会みたいに見える
 おれは宗教なんて信じないし
 洗礼の効果だって信じない
 だけどその光に照らされると
 懺悔する気になった

 
 通り過ぎると
 おれは安心した
 何も良くならないんだと
 思い込むことができた
 ほどけた靴紐を結んだ
 おれの頭の中は人間のことで
 いっぱいだった






自由詩 ロケット Copyright カンチェルスキス 2005-04-13 19:56:43
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