駆け抜ける
ミナト 螢

この世界が寝静まる夜に
僕はスピードを手に入れる
暗闇が光らせる眼の中に
飴玉を溶かして夢を見る
純粋な甘さが耳を舐めると
日付変更線から聴こえる
壁のない部屋に飛ぶラジオの音
いつもチューニングをした
不揃いな林檎みたいに
僕は誰と背比べをしていたのかな
立ち上がるまでの間は
命の芯が折れないように
重力を忘れたくなる
僕をどこかへ運んでくれる
新幹線はもう行ってしまった
目指す方角は自分で決めて
その手足が唇が夜を駆け抜ける


自由詩 駆け抜ける Copyright ミナト 螢 2020-06-18 10:30:08
notebook Home 戻る