to you (to me)
mizunomadoka



タイムループのあなたは

何度も私に会いにきてくれた

いつも結末は違ったけれど

その度に、私は

あなたのいない6月28日の朝を迎えた




「なぜ記憶は遺伝しないんだろう?」って言ってたよね

ものすごく大まかにいうと

記憶は外側に蓄積されてた

世界の終わりに(それとも途中に)

いくつもの私の人生が統合されて

初めて、あなたが消えた理由が分かった

あなたは宇宙の特異点だったの!

(嘘よ。ちょっと言ってみたかっただけ)

あなたが時を超えられないことを知った




あなた以外にもタイムループしてる人は大勢いたみたい

その人たちにもメッセージがいくと思うけど

あなたには私が選ばれた

ううん。私が立候補した

あなたのお母さんやカレンには悪いけど

私が伝えたかった




『タイムループは終わり。次の人生で最後よ。
 6月27日に眠ったら、もう目は覚めないの。』




だから

今まででいちばん幸せだった7日間を過ごしてね

大金をみんなにあげて旅行したり、これは馬鹿げた考えね

愛してる人みんなに会って抱きしめてあげて

なにも知らずに図書館でアルバイトしてる

私にも会いにきて

もう知ってるでしょうけど

出会ったときからずっと

あなたのことが好きだった

いらないことを書きすぎて行数がなくなっちゃった

元気でね。さよなら。またね。




「結婚しよう」
「え、なに言ってんの?」
「新婚旅行にもいこう」
「は?」
「どこがいい?」
私は壁のポスターを指さす
「グランドキャニオン」
「行こう」
「と火星」
「一週間で火星はちょっと」
「なんで一週間なの?」
「まあ色々と」
「じゃあ火星は未来でいいわよ」
「じゃあ火星は未来にしよう」

「ねえ。私とあなたどっちが死ぬの?」
「どっちも死なないよ」
「たぶん今はまだ」
「今はまだ」
「信じていいの?」
「もちろん」
「ほんとに?」
あなたが笑う
「ずっときみのことが好きだったんだ」
「なに?」
「伝えてくれてありがとう」
「なにを?」







自由詩 to you (to me) Copyright mizunomadoka 2020-06-17 17:21:46
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