小詩集・とどまる
岡部淳太郎
とどまる 1
ここに
とどまっていると
裁かれる
変化のない停滞に見えて
それは罪であると
見做される
とどまる 2
ここになんとか
とどまろうとする
すべての良き者は
ここから去ってしまったから
すべての記憶はここにあって
動こうとしないから
ここになんとか
とどまろうとする
とどまる 3
風が
とどまっている
水も
流れなくなっている
みんなここに集まって
ここでくつろいでいる
そうした風や水や鳥や雲を饗応して
それから
ゆっくりと風のように旅立つ
とどまる 4
心とは常に変化し
一瞬たりともとどまらないもの
だからこそここにとどまって
移り変る人や事物を見据えて
そして、歌う
とどまる 5
しずかな日
すべてがあるべきところに収まって
とどまっているように思える日
すべての流れも停滞も
ゆったりとした大きな
とどまりのような変化のなかに
あることを知る
有無。
とどまる 6
それから
ここから出て行ったものを見送り
ここにかつていたものたちを思い
自らはここにとどまって
すべての憂愁も煩悩も
空無の渦のなかに落ちていくことを知る
いまもまだ
ここを通りすぎていくものたちがあり
ここにつかのまとどまるものもあって
それから、
(二〇一七年九月)