ひだり肩越しに見る夜
ことこ

風船をふくらましてよ ひとりでに地中海までとんでいくなら


はなれたの それともわたしがはなしたの 派生していくはだかのきおく


さみしさが寄せ集まって血縁の観葉植物(手をつないでて)


しあわせの形にふくれて舟揺れの五月雨式に垂らす絵の具よ


ほんとうと、うそ、それぞれのその指に点滅を繰り返してる闇


あともどりできないとこまで蹴り散らす 熟れた果実のつぶつぶのとこ


いつもなら風の吹かないことだった 生活なんてみんなあるもの


ねじれてる針をのみこむ食道の奥にあなたがかつていたこと


せきららにせき止められる耳たぶのうら、ひだり肩越しに見る夜


そうやってずっと降ってた窓のそと 乗り換えのない電車みたいに


ていねいに余白を切りとり影になる ただしい道を選ばなくていい


にくしみが積もり積もって降り注ぐあらゆるひとにやさしくしたい


死んだ日と生まれた日とが同じならまさに命日(あなたに祈る)


短歌 ひだり肩越しに見る夜 Copyright ことこ 2020-06-13 21:09:24
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