小詩集・変化
岡部淳太郎
変化 1
かたくなな
個であるかぎり
変ることはない
ゆるやかな
流れのごとく
泣きながら行け
夜の空にいっしゅんよぎる
星のように
泣きながら変れ
変化 2
季節は変る
春は華やぎ
夏は懐かしい
秋は明かされぬ秘密
冬は深く心に積もって
そうして人の
変化を助けて
変化 3
繰り返される変化
繰り言のように何度も何度でも
括られて
縊られて
そうした苦しみのなかで
生きるため
繰り返す変化
繰り言でもかまわずに
何度も
何度でも
変化 4
渡り鳥が群れて飛ぶ
街の灯りが点けられる
群れは次の季節にはいなくなる
灯りは夜明けには少しずつ消されて
どこにも渡れずにたたずむ
一人の人がいる
変化 5
時間は一つの罠である
誰もが次の時を気にして
そのために準備し
変ろうとまでするが
時間はない
おまえはおまえであって
過去も未来も一つ
本当に変り果てたおまえなど
存在しない
変化 6
何一つ変りはしない
人の愛しさも
人の愚かさも同じ
去年の花は
今年の花と同じ
その上を渡る風もまた
そのなかで人は
かすかな変化に脅えて
今日も生きている
そしてふと気づけば
すべてがこんなにも
懐かしくなるのだ
(二〇一七年八月)