汚れた怒り
jin
三日目のマスクから
漏れ出た鋭いため息が
乗客の肌を斬りつけている
新型コロナウイルスが
蔓延する都市で
朝の電車に揺られながら
何重にも押し黙る
心の声まで封鎖するように
……自分は感染者じゃないの?
キャンディ・セッズ
「唇で不織布を突き上げてくれ、まだ包み紙の中にいるみたいだから」
不安や恐怖や諦めやらを
混ぜ合わせて描きなぐりつけた、
まだら模様の絵画が
暗く沈んだ車窓に張り付いている
誰も見ることはできない
ガラスを指でなぞり思索に耽る
("雨月"は雲の向こう側。昔の人は見えないものに名前を付けた。想いを膨らませて)
キャンディ・セッズ
「言うてる場合か指洗え、おれが名付けよう"COVID-19"」
一方、中吊り広告に踊る文字
「安倍総理の決断が感染爆発を止めた」
「武漢肺炎、日本は負けない!」
なんだこれ、頭が狂っちまいそうだ
キャンディ・セッズ
「叫び出したくて舌がうずいているな。おかげで甘い香りが強烈だぜ」
三日目のマスクから
漏れ出た鋭いため息が
無我夢中で振り下ろす彫刻刀のように
顔面を刻みつづけて
やがて、無表情の仮面が完成する
そこには、血飛沫のように飛び散った、
無数の見えない怒りが付着しているのだ
キャンディ・セッズ
「神の唯一の声は沈黙だとよ、ならばおれたちゃ怒ろぜワイワイ」
電車の扉が開く
元も子もない、
巨大なくしゃみのように
乗客が吐き出されていく
職場へ向かうみち
やけにうるさい足音を
かき消すために
口のなか、
爆音で噛み砕かれてしまう
MC飴玉、断末魔の饒舌コーラ味
「ready, go!」
汚れたおれたち
いかれたあやまち
街くりだす マスクずらす
すぐ散ってった 地下鉄 damn! クラスター
重々承知、自粛要請 you said
ようせんて 補償なしで 根性なし総理
sorry, just began 批判 わんわん
ほっといたら ホステス詰むのに
ふんわりしてろってテロだろ うちいてろ テレワ〜
汚れたおれたち
さびれたこのみち
一律 aid them いちいちアイーン
なんか大事だった 寝にいくミニシアター
無神経 利権 天空だけmoney flow
とりあえず 雨降らせ 関係ねえとこにも
quickly, スピード感 批判 わんわん
ズレとったら 崩壊すんのに
怒りのvoiceは隠したい汚れかクソ麻生 asshole!