無限に広がる外の世界
邦秋
宙に浮かぶ石畳を、
鼻歌交じりにスキップで駆ける
両手には、憧れだったパピヨンを抱えて
マーブル色の新しい靴からは真っ白な羽根
そうだ、今僕は、天空のスタジオに向かっているんだ
空中でも幸いに潤ったイルカが僕たちを見ながら優しく通り過ぎ、
相変わらず向日葵の種を懸命に頬張るリスを僕たちが通り過ぎる
空は、かつて水彩画で描いたことのある
コバルトブルーとバイオレットが入り混じったあの色で覆われていて
空気は、あの日あの人が教えてくれた
ハンドクリームの柔らかな香りが漂っている
ライブ会場で開演前に流れる、低音が効いてリバーブのかかった、
初めて聴くのに無条件に格好良いと思ってしまえる音楽が、
今この空間に流れている
辺りには壁もスピーカーも無いのに
…楽しい架空を考え始めれば
外で過ごしていたら到底描けなかった
もう一つの外の世界が無限に広がっていく
そんな楽しいおうちじかん