露を受ける
凍湖(とおこ)

四角いガラス面をするすると撫でますと
指先は青く黄色く染まり
眼球は吸い込まれ
奇妙に近く感じます。
錯覚でしょうか。
いつもすぐそこにいる気がするのです。
だってあなたの朝ごはんも晩ごはんも知っているし
なんであったら、あなたの同居人や同僚も知らない愚痴や秘密も知っています。
なぜならあなたがこぼすから。
あなたの蛇口からぽたぽたしたたり落ちた露を受ける皿が何枚も何枚も
わたしの部屋のローテーブルに並んでいます。
藍色のトカゲの形をしたのや、白い磁器を銀で金継ぎしたのや、乳白色の釉薬に蜘蛛の巣の貫入のあるのや、とにかくいろいろな器です。
もう何年も溜めていますのに、足りるということがありません。
色とりどりで雑多で愉快です。愉快になる一方です。
あなたも溜めていますでしょうか。
いつかお聞きしたいと思っています。


自由詩 露を受ける Copyright 凍湖(とおこ) 2020-04-23 03:57:01
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