白モクレン
風の化身

風が
春の歌を口ずさんでいる
穏やかな日

ぴんと背筋を伸ばした
素敵な貴婦人が
胸のポケットに
お洒落にしまい込んだ
白いハンカチを
ふわりと
私の前に落として行った

一瞬
「落としましたよ」と
声をかけようとして
すぐに止めた

古典的だけど
どきどきするほど
素敵な誘い方

「ねえ
よそ見しないで
私の方だけ見て」と
言いたげだね

楚々とした美人だけれど
やることは大胆

暖かさに誘われて
夢の中に迷い込むと

何時の間にか
心まで
白く染められてしまった



自由詩 白モクレン Copyright 風の化身 2020-04-10 18:02:16
notebook Home 戻る