ショッピングモール 或いはアドバルーンの浮かんでいない商業施設
TAT
陽の光と太陽の埃の中で
ブラインドの隙間から射し込む福音は
フードコートの中の
百数十もの人間を
日曜日色に染めている
まるで動物園の動物のようだ
サラダを食み
ハンバーグを咀嚼して
水を飲み
うどんを啜っている
ここには285もの専門店があり
望むものは何でも置いてあるかのようだが
欲しいものは何一つ置いていないから
何の望みも無い
スーパーがあり
ドラッグストアがあり
何十種類ものレストランがあり
サイクリングショップや
酒屋
映画館に
劇場に
UNIQLOにABCマート
もしも君が闇を抱えているのなら
二階の東側に
ヴィレッジバンガードもある
英会話教室があり
コンタクトレンズ屋があり
それに付随する眼科がある
保険屋があり
本屋があり
楽器屋もある
何もかもが清潔に網羅されていて
まるで透明な怪物のように
がらんどうの迷宮のように
すべての家族達に
幸せを強要している
ここには何もかもが揃っていて且つ
欲しいものが何一つ無いなんて
全く素晴らしい
人類の叡智を結集させた
超一流の
最高のブラックジョークだ
そんな訳で俺は
インディアンのメイクで
ジャックナイフ持って走り出したくなる
弓と槍で
手当たり次第に
人間狩り始めたい衝動に駆られる
でもそんな事 本当にしたら
こっちが逆に
気違い呼ばわりされるだろうから
なんとか我慢している
そのようにして溜まってゆくガスが
いつか致命的に俺の人生を壊すのかもしれないけれど
今じゃもうガスを入れとけるようなアドバルーンの浮かんだ商業施設なんか
どこにもない