・主人公 　　　　　　　　　　　　　　　　　

　手品が得意　名は呼ばれない

・恋人　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　
　四六時中怒っている

・停留所でバスを待っている人　　　　　

　朝靄好き

・赤い靴の老婆 　　　　　　　

　主人公の靴を赤く染める
　　　　　　
・人語を解する事を隠している猫　 　　

　昨日見かけた老ネズミを想って胸が痛む理由を知るために主人公と共に手足を染める

・鍵製の少年　　　　　　　　　　　　　　　

　燃えてしまった地図に気がつく　





・借金の返済に一生を捧げる男　　　

　人も獣であると考えている　子どもの頃に二日続けてホームランを打ったことは覚えていない

・青年　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　結局人はひとりきりであると確信する　しかしその五十一年と五十一秒後に運命の恋に落ちる

・四角関係の女　　　　　　　　　　　　　

　五個目の頂点を見つける　仮に「チャート式　人生」があれば欲しいと考える　魚が嫌い

・妊婦

　言葉を使わずに血液と子の心臓について思う　昨日魚拓を採った

・1000022代遡った御先祖様　　 　　

　1リットル当たり92円で売られる

・悲しい人 　　　　　　　　　　　　　　

　背負っていける荷物ではないと泣き叫んで震えながら歩く

・悲しい人を見ている人　　　　　　　　　

　声をかけることも泣くこともわからずに息を詰めながら共に歩いて泣いて笑う

・農夫を背負った漁夫 　 　 　　　　　

　絶望している　背負っている農夫が誰だか知らない

・漁夫に背負われた農夫　　　　　　　　

　絶望している　背負っている漁夫が誰だか知らない

・泣かなかった人　 　　　　　　　　　　　

　空を覆いつくすような桜吹雪の中で訳もなく泣く





・産婆　 　　　　　　　　　　　　　　　　　

　眼は開くためにあるという

・墓守 　　　　　　　　　　　　　　　 　　　

　眼は閉じるためにあるという

・全ての本を読んだ女　　　　　　　　　

　若き日の赤い靴の老婆　

・時間　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　主人公達に謎々の欠片を託す

・世界　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　永遠に拡散し主人公達に無限希釈を仕掛ける





・後悔しない者　　　　　　　　　　　　　　

　登場しない

・憂慮しない者　　　　　

　登場しない

・死なない者　　　　　　　　　　　　　　　

　登場しない

・知っている者 　　　　　　　　　　　　　　

　登場しない

・理解する者 　　　　　　　　　　　　　　　

　登場しない

・もう一つあった選択肢　　　　　　　　　　　　

　登場しない