よみがえる
もちはる

山の中腹に
本堂が鎮座する
その床下の
戒壇を
 独り
  降りる

   ひんやりとした
   そこは真っ暗
   右手は壁を伝い
   左手は闇を泳いで
   目を見開いても
   何も見えずに
   恐る恐る進む足
   遠い昔の土蔵の中
   悪いことはしていません
   良い子になります
   あの時と同じように
   心で唱えながら
   ゆっくりゆっくり通り抜け

  光が見え
 風が匂い
人の声がする
身体ごと真っ新に
一瞬によみがえる


自由詩 よみがえる Copyright もちはる 2020-04-06 21:25:26
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