春の森
丘白月

静かな春の森
やわらかな光
風と踊る花たち

森に満ちる日差しが
海のように揺り籠のように
眠る妖精をつつむ

夢を見てるのね遠い春の夢を
閉じた瞳から閉じた唇から
やさしい記憶があふれてる

誰もいない静かな森で
時おりゆれる妖精の羽音が
どこまでも響いていく

羽音はいつしか
春の空に溶けてしまって
空の海でおよぐ恋人の足に
そっと絡みついていく
気づかないほどに

遥かな過去からの
夢がシャボン玉のように
幾つも小さく大きく
夢の森に生まれて
届いては割れて
ひとつでもいいから
抱いてくれたらと願い
幼いままの心の妖精は
いつまでも夢を見て眠る



自由詩 春の森 Copyright 丘白月 2020-04-01 18:34:25
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